今宿の新聞文化を見つめて19年。新たな黎明期の到来を感じる男がいる。

読売センター今宿

時代の波に乗るか、飲まれるか。

夜明けの薄灯りの中、いつもの道をバイクで走り出す。
どんなに時代が変わっても、新聞配達員の仕事は変わらない。
ただ雨風に負けない、丈夫な心と身体があればいい。

そんな「昭和ロマン」の香りを纏う男、篠原さん。「昔ながら」の新聞配達業のイメージを変え、仕事や地域を盛り上げたいと考えているそう。いまやこの地域の配達を取りまとめるセンター長である彼もまた、はじめは1人の配達員だったという。

この仕事に出会ったのは高校3年生の時。生まれた街の大阪・堺を飛び出し、新聞奨学生の制度を利用して横浜の映画専門学校に通った。卒業後は不動産屋に就職し20年間勤めたが、ある日“なにかが違う”という強い思いに駆られた。そんな時に思い出したのが、新聞配達の仕事だった。

37歳での転職。しかし不思議と不安はなかったそう。上司に恵まれ、販売店を1つ任されることにもなった。それが福岡、そして今宿との出会いだったという。

ー販売店の展開に合わせて福岡へいらっしゃったということですか?

そうそう、まず福岡がどこにあるかも知らなかった。南の方だから、あったかいのかな?ぐらいの感じで。それで今宿はね、すぐそばに海があったから「おーいいところやな」と思って。それで決めたけどね。特に強い思い入れがあったわけではないんですよ。

ー今宿が事業のスタート地点ということですね。

そうですね。でも正直、こんなに長く続くとは思わなかった…半年持つかなって。自分でもすぐに辞めるんじゃないかと思ったけど、結果19年も続けてこられた。
今宿の人がむっちゃいい人ばかりやからこんだけ続いているんですよ。あったかい人ばかりやからね、本当に。そして商工会の方にも感謝していますね。友達も知り合いも、誰一人おらん街に来た俺を受け入れてくれたから。あたたかい声をかけてもらって、ありがたいなぁとすごく思う。感謝してます。

ー新聞配達以外にも、物販や便利屋などの副業的なお仕事もされているようですが、はじめたきっかけは?

新聞っていう収入と折り込みっていう収入があって、これだけで本来十分なはずなんですよ。でも、この先どうなるかわからない時代なので、もう一つの柱が必要やなと思ってはじめました。今では、地域の方と新聞との接点になっているのかなと思います。

―変わったご依頼などのエピソードはありますか?

物販で一番売れるのが梅干しなんですよね。なぜかわからないけど、めっちゃ売れる。あとアゴだしね。それだけでも新聞を読む年齢層がわかるでしょ?若い人は普通ネットで頼むじゃないですか。でも新聞読む人は、また若い人らとは違うんよね。

―ご年配の方のニーズと上手くマッチしているのですね。

そうです、そうです。だから、今のお客さんたちには元気で長生きしてもらいたいんよ。病気だったら、疲れてて新聞読めんやん。新聞読めるっていうのは元気な証拠なんよ。

新聞屋が「未来のためにできること」は何か?


新聞って、自分の興味あるものだけじゃなくて、幅広く読めるからすごくいいと思うんですよね。その良さを伝えきれていない。それが残念やね。本来俺は、もっともっと新聞の良さを伝えないといけないけど、配るだけになっちゃってる。その努力が足らないから、お客さんの数が減ってきてるのかと。

ー逆に新聞に親しむ人が増えれば、会社と業界の両方を盛り上げることができる?

そう。だから、そのためにどうやったらスタッフのお給料上げられるだろうか?っていつも考えてますね。例えば一つの区域を配るなら、会社の垣根を越えて全紙が集まって共同で配る。そうすると配る部数が増えるので、スタッフ一人当たりの給料が自然と上がる。そうなると理想的ですよね。販売店同士の競争の時代は終わった。どうやって今の読者さんを大事にするかが重要ですね。好き嫌いなく手を握り合えば、みんなにとって良くなるのにと思っています。

でもまぁ、すぐにそうなるとは思えないから宅配したり、いろんなことをしています。新聞配達にかかる時間は大体2〜3時間と短時間ですから、そのうえ稼げる仕事だってなったら、自分も配達や販売店の経営をしたいなと思う人も増えてくるだろうし、そういう風に思ってくれる人を育てることが大事かなと思いますね。人が育って初めて読者も増えるし、俺たちもいい仕事ができるんで…ということで、スタッフ募集中です。寮もありますので住むところと仕事をお探しの方はぜひ応募してください!

ー募集中なんですね。では最後に、今後の展望を聞かせてください。

販売店をはじめたばかりの頃は、店の脇で駄菓子屋をやっていたんです。そうすると人が集まるでしょ?子供とかも来るでしょ?新聞にも馴染むでしょ?で、その子達が大きくなったときに新聞読むかもしれんし。そういうとっかかりがあるといいかなと。今はやめてしまっているけど…今後はまた、ちょっとした駄菓子屋でもプラモデル屋でもいいんですけど、そういうのをやりたいなと考えています。

ー今宿エリアの新聞文化が底上げできるといいですよね。

うん、あとは些細なことでも街のことについて気になったら、うちに聞きに来てくれたらと思っています。配達で街のあちこちを回ってますから、自然と情報が集まってくるんで。疑問にお答えできるかもしれないです。まぁ、なんでも気軽にお喋りに来てくださいっていうことですね。お待ちしてます!

 

店名 読売センター今宿
代表者 篠原 清隆
住所 〒819-0168 福岡市西区今宿駅前1-5-5 第2井原ビル1F
TEL 092-806-0461